以前、自動車に使われているものという目線で、制御工学について軽く書いてみました。
(過去記事はこちら)
学生時代ずっと制御理論を学んできて、社会人になっても一応は制御関連の部署にいるわけですが、大学と企業ではやっぱりギャップがあるなあというのを感じることも多く、ちょっともどかしく感じます。
ということで、どういった点にギャップがあると感じているかを個人の視点ですがまとめておくことにします。
大学と企業のギャップを感じたこと
現場では、制御理論を使うハードルが高い
当然ですが、企業にいる全員が制御理論に明るいわけではありません。むしろうちの会社なんかは機械工学を専攻していた方が多く、制御理論を専攻していたという人は少数です。それゆえ、当然ながら周囲の理解度が大学時代とは全然違います。
また、大学では「既存の課題をクリアし、より新しいことができるようにすること」を目的として理論の研究をしてきましたが(制御に限らず、工学系どの分野にも共通する目的だとは思うんですが)、企業では、そこに「現場の人間が使いこなせること」という暗黙の制約がかかります。
企業として製品を出す以上、その品質を担保しなければなりません。製品作りの手段が「よくわからないけど、なんか上手くいく」という状態だと、「ほんとに大丈夫?変な動きしない?」ということで品質を担保しているとは言えなくなってしまいます。
また、品質を担保するには「誰が作っても同じクオリティになること」が重要で、そのためには「作り手みんなが理屈を理解していること」が必要になってきます。
ごちゃごちゃ書きましたが、要は「みんなが理解できて使いこなせる」ものでないと製品作りには使いにくいということです。制御理論は真面目に理解しようと思うと数学的な土台が必要になるので、最新の理論を開発現場にガンガン使っていくにはハードルが高いのかなと思います。
また、複雑な制御になるとどうしてもコンピュータの計算量が大きくなってしまうため、コストががかかるという問題もあります。この辺は日進月歩でコンピュータの性能が進歩しているでしょうし、ハードのスペック的に実装が現実的になるのも時間の問題かもしれませんが。
なので、現場ではPID制御のような比較的分かりやすく実装しやすいものが使われることが多いように感じます。もちろんPID制御が悪いわけではないのですが、元理論屋としてはもう少し色々な制御を使えたらいいのになぁと感じます。。
どんな武器を使うか、武器をどう使いこなすか
大学時代は実践よりも理論をあれこれ考える立場だったので、正直、理論さえしっかりしていればパラメータの決め方なんて制御系が破綻しないようにしとけば何でもええやろ、という感じでした。
ですが企業に入ると、パラメータの値1つとってもそれが製品の質に直結するので、その値に設定する理由を考えなくてはなりません。
例えるならば、どんな武器を使って攻略するかを考えていたのが大学時代で、その武器をどう使うかを考えているのが今という感じです。
理論と実践、両方経験してきて思うことは、より良いものを作っていくにはどちらの目線も大事なのかなということです。月並みかもしれませんが。新しい理論であっても、使い方が分かりにくければあまり意味はないですからね。
今後、どうやって制御理論を使っていくか
近年ではニューラルネットワークを用いた制御だとか、マルチエーエジェント制御だとか、理論の研究はどんどん複雑なものになっていると感じます。
それだけ理論的にはどんどん出来ることが増えてきているので、あとはそれを使いこなせる形に噛み砕いて周知するのが専攻していた私の役目なのかなとも思います。
…若手という立場上、苦労するところもあるかもしれませんが。。
つらつらと思いつくままに書いてしまいましたが、まだ休暇中の身です。笑
とりあえず今はアンテナを高くして最近の制御分野の動向を探りつつ、何かしら活かせるところがないかなーと考えてみることにします。
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