ギヤ比とはなんだろう

クルマ
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クルマやバイクの主要諸元をみると載っている変速比(ギヤ比)
あんまり意識して見られている方は少ないのではないでしょうか?

だいたいクルマやバイクの紹介記事とか見ても、

エンジンの最高出力最大トルク最大回転数には触れていても

ギヤ比に触れている記事ってあんまりないんですよね。

しかしながら、トランスミッションに従事している立場から言わせてもらうと、
最終的な駆動力はトランスミッションのギヤ比に大きく影響されます
つまり走行性能を語るなら外せないくらい大事な諸元なんです。

なので、今日はギヤ比の役割について書いてみます。
(そもそもトランスミッションってどんな部品?というのはこちらの記事で書いてます)
知っておくと、主要諸元を見るのがちょっと楽しくなる、かも。笑

ギヤ比とは

まずは、ギヤ比ってずばり何やねんという話から。

一言でいうと、トランスミッションの入力と出力の回転数比を表します。

すなわち、

ギヤ比 = 入力回転数 / 出力回転数

です。ざっくり考えるなら、トランスミッションの入力と出力はそれぞれエンジン回転と車速だと思ってもらえればいいです。

つまり、ギヤ比が低い方が同じエンジン回転数に対して

高い車速になります。

AT車では加速していくほど高いギヤ段に切り替わっていきますが、高ギヤ段ほどギヤ比は小さくなります。

なので、加速していくと下図のようにエンジン回転数が変化していきます。

こうすることで、エンジン回転を一定の領域に保ちながら加速していくことができます。子供の頃、なんで加速してるのにエンジン回転がいちいち下がるんだろう、と思ってましたがこういうことだったんですね。

駆動力への影響

さて、上記ではギヤ比と回転数の関係について書きました。

上の記述からいえることは、エンジン回転を一定範囲に保てるようにギヤ比を設定すれば、4速ATだろうが8速ATだろうが出せるスピードは同じになるということです。

じゃあ、なんでわざわざ8速とか10速とかそんなギヤ段の多い

ややこしいもん作るんだ?

という疑問が出てくるかと思います。

その答えの一つが駆動力変化。実は、ギヤ比は入出力回転数の比であると共に

ギヤ比 = 出力トルク/ 入力トルク

という関係もあります。トルクというのは回転を加速させる力のことでなので、トランスミッションの出力トルクは車両の駆動力とほぼ同義です。

すなわち、エンジントルクが一定という状況で考えると、ギヤ比が高い方が発生されられる駆動力が低い=加速力が低い ということになります。

逆に低いギヤ段の方がギヤ比が高い=加速力が高いので、坂道を登ったり急加速したい場合には低いギヤ段に切り替えたほうがスムーズに走行できます。

さて、ここでギヤ段を切り替える時のことを考えてみましょう。例えば、ギヤ比の範囲が同じ4速の場合と6速のトランスミッションがあるとします。この場合、1速からどんどん加速してギヤ段を上げていくときの駆動力変化を図示すると下記のようになります。

すなわち、ギヤ段が少ないほうが1変速あたりの駆動力変化が大きくなります。これは車両のドラビリに大きく影響します。(ドラビリ≒乗り心地だと思ってもらえればいいです)

たとえば、高級車みたいなゆったり乗りたいクルマで、特に大きな操作をしてないのに変速するたび加速力がガクンガクンと変化したら違和感ありますよね。多段化すれば変速での駆動力変化は小さくなるので、よりスムーズに走ることができます。

まぁ、スムーズさを求めるだけなら無段変速機(CVT)っていう連続的にギヤ比を切り替えるタイプのトランスミッション (何速とかいう概念でなく、ギヤ比を常に変化させる仕組みになっている) があって、大抵の大衆車はこれが載ってるんですけどね…。

実例紹介

あんまり抽象的な話をしてもわかりにくいと思うので、ここで実例を挙げてみましょう。

トヨタ クラウン × メルセデスベンツ cクラス

ギヤ比および最大トルクは下記のようになっています。

◆ クラウン

1st 4.596
2nd 2.724
3rd 1.863
4th 1.464
5th 1.231
6th 1.000
7th 0.824
8th 0.685
減速比 3.133
最大トルク 350

◆Cクラス

ギヤ比
1st 5.353
2nd 3.243
3rd 2.252
4th 1.636
5th 1.211
6th 1.000
7th 0.865
8th 0.717
9th 0.601
減速比 3.066
最大トルク 250

減速比というのはトランスミッションとタイヤの間に付いているディファレンシャルギヤ(デフギヤ)と呼ばれるもののギヤ比です。なので、エンジンから最終的にタイヤに伝わる駆動力は

駆動力=エンジントルク×ギヤ比×減速比

となります。したがって、各ギヤ段での最大駆動力を比較してみると下記のような感じになります。

つまり全体的にみるとクラウンの方が発生させられる駆動力は高いことになります。一方で、変速による駆動力変化はCクラスの方が小さくなります。したがって、Cクラスはクラウンと比較してラグジュアリー寄り、といえると思います。

厳密にいうと、車両の加速度にはタイヤ径と車両重量も影響してくるんですが、上記2つは同じくらいとして考えています。

まとめ

今日の内容をまとめると下記のようになります。

  • ギヤ比 = 入力回転数 / 出力回転数
  • ギヤ比 = 出力トルク/ 入力トルク
  • ギヤ段を増やしたほうが変速時の駆動力変化が少なくスムーズに走れる

この記事を見て、主要諸元の見方がちょっとでも変わったなら幸いです。

ちなみに、変速機の制御に対してもうちょっと詳しく知りたい方はこちらの記事にも書いてますので参考にしてください。