ドライバビリティ、略してドラビリという言葉は、自動車業界でよく使われます。
おおまかな意味としては「乗り心地」とほぼ同義です(こちらの過去記事でもドラビリについて軽く触れています)。
従来のドラビリ評価と課題
ドラビリに優れたクルマを作るというのは作り手にとっての使命でありますが、そのためには、開発時にドラビリを評価する必要があります。
従来より、実際に人が乗ってドラビリを評価し、目標とするレベルに向けて改善していくという開発の仕方をしているわけですが、
- 車両の挙動が同じでも人によって感じ方が違う
- 乗り心地を定量的に表す方法が未確立
という課題もあります。言い換えると、評価結果が評価する人間に依存してしまうということです。
多種多様なクルマを短い期間で開発しなければならないこのご時世、いちいち職人を育てていくには時間がかかり過ぎます。(もちろん感覚の養成という意味では重要ですが)
そこで重要となってくるのが、「ドラビリを数値として定量的に表現する」ということ。
客観的な指標で表すことができれば、人による評価結果のばらつきを防ぐことができ、製品としての品質向上に繋がると考えられます。
まぁ、個人的には単に「人の感性を数値化する」という点に対して興味があるだけなんですが。
定量的なドラビリ評価のアプローチ
上記のようなテーマは従来から研究されているようで、論文を調べてみるといくつかのアプローチの仕方があることがわかりました。
筋電位による評価
筋電位というのは、筋肉が動くときに発生する電位のことです。いきなり筋肉の話になったので「なんでやねん」と思うかもしれませんが、どうやら、人間がストレスを感じると筋電位に影響するという研究結果があるようです。
こうした結果を踏まえて、筋電位の変化をドラビリの指標として活用できないかという研究がありました。
この論文では車両の左右方向加速度(いわゆる横G)と筋電位変化に相関があることを示唆しています。
つまり、横Gが大きいほど搭乗者にとってストレスになるということであり、乗り心地(ドラビリ)としては悪くなるということになります。
ジャーク(躍度)による評価
以前の記事でも少し触れましたが、加速度の変化量(躍度)とドラビリには相関があるという研究結果もあります。
この論文では、加速度の絶対値、躍度と乗り心地の相関を線形重回帰モデルを用いて定式化しています。乗り心地の評価は被験者による4段階評価とし、回帰モデルのパラメータは4人の被験者に対する実験結果から同定しています。
ファジィ理論による評価構造定量化
上記とはちょっと変わった視点として、ファジィ理論によって乗り心地という概念の構造を定量化するという研究もあります。
どういうことかというと、人間の感じる乗り心地に関わる要因を
- 車内環境要因
- 振動刺激要因
- 生理的要因
- 心理的要因
と細かく分類し、それぞれの要因に対して評価基準をさらに細かく設定しています。
そして4人の被験者に対して走行実験を行い、各評価基準に対して7段階評価(アンケート)をすることで、乗り心地の総合評価とどの要因がどれくらい寄与するのかを定量的に表すことができるというものです。
乗り心地を多角的に捉えている点が個人的に興味深いです。正直ファジィはあまり詳しくないですが…笑
まとめ
今日は文献調査ということで、ドラビリの定量化に関わりそうな論文をいくつかピックアップしてみました。
こうして先行研究を調べてみることで、いままで結構抽象的にしか捉えられていなかったドラビリという概念が、ちょっと具体的にイメージできるようになった気がします。
今後、ここから何かアイディアに繋がればいいなー、と思っています。