これまでの記事では、制御対象の動きは微分方程式で表されるというところから始まり、
について書いてきました。
かなり端折ってはいますが、これで制御系設計の一通りの流れ(安定化だけですが)については説明してきました。

とはいえ、ある程度実例がないと分かりにくいと思うので、それは後々書き加えておこうと思います。
今回はモデル化の方法である線形化という考え方と、多入力多出力の制御対象を記述するのに便利な状態空間表現について書いておきます。
線形化とは
多くのシステムは非線形特性をもつ
タイヤの摩擦力特性(横滑り角に対して非線形な特性をもつ。過去記事参照) のように、非線形な特性をもつシステムは数多く存在します。
というか、多くの場合、挙動を微分方程式で表すと非線形な項を含んでしまうと思います。
例えば、下記のような倒立振子を考えてみましょう。
このシステムを微分方程式で表すと
$$\ddot{\theta}=\frac{g}{l}\sin\theta$$
となります。(導出の方法はwikiに載ってます)

\(\theta\)に関する三角算数を含むので、明らかに非線形な方程式となりますね。
伝達関数やラプラス変換は線形なシステムのみに使える概念なので、このままでは、制御系設計以前に微分方程式を解くことすら難しくなってしまいます。
線形化の考え方
線形化は、非線形な特性をもつシステムのある1点の周りだけを考えることで、線形な特性だとみなす考え方です。
たとえば倒立振子の場合、倒立した状態、すなわち\(\theta=0\)の周辺だけを考えれば
$$\sin\theta\approx \theta$$
というように近似できるので、線形なシステム
$$\ddot{\theta}=\frac{g}{l}\theta$$
として考えることができるわけです。
線形化を使うことで、多くのシステムを線形システムとして扱うことができるようになり、古典制御や現代制御の理論を適用することができます。
線形化する上での注意点
注意点として、線形化では、あくまである1点の近傍のみに着目して特性を近似しているため、近傍から遠く外れた状態を考えるほど近似精度は悪くなり、実際の特性と合わなくなります。
たとえば倒立振子なら、垂れ下がった状態から振り上げるような動きを考えたい場合には、少なくとも\(\theta=180°\)程度の範囲まで考える必要があるため、線形化を使うことはできません。
こういう場合は非線形なシステムとして扱う必要があり、非線形制御理論を適用することになりますが、線形の制御理論よりも難解になります。
ここまでのまとめ
- 現実に存在するシステムは非線形性をもつことが多い
- 非線形な特性のうちある1点に着目し、その近くだけで考えると線形に近似できる
- 線形化はあくまである点周りの近似なので、そこから離れた状態になるほど精度が落ちる
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